ハナミツ
最善の策みたいに言う姉に
俺は苦笑した。
***
サラリーマンだった親父は、若いとき
取引先にいた母さんを好きになった。
何とかして、その会社にいる母さんに
会うために用事を作っては足を運んだ。
口下手で器用じゃない親父は母さんをご飯に
誘うのに、二ヶ月もかかったらしい。
ー本当にどんくさい人よね。
母さんに馴れ初めを
聞いたときに苦笑しながら言っていた。
「直昭は、彼女とかできたの?」
「は?」
母さんの欲しがっていた食器を買い、
姉弟からのプレゼントも決めかけていた頃に
ぽつりと言った。
「……なんで、また急に。」
「なんか、あなたの感じが変わったからね。
やさしくなったような。」