ハナミツ
姉が結婚して、俺はいつか自分も
するんだろうかと考えた時期もあった。
けどまだその時は若くて、結婚する自分の姿は
到底考えられなかった。
声優としてまだ駆け出しだったから、
そんなことは二の次だったのかもしれない。
付き合った人は二人いた。
別に嫌いじゃなかった、
けれど、夢だった仕事につけて嬉しくて
嬉しくたまらなくて、早く一人前になりたくて
彼女をないがしろにしてしまった。
申し訳ないことをしたと思う。
何となくつき合う事が分からなくなって、
ぼんやりしていたら30を過ぎていた。
そんなときに現れたのが藤ノ宮さんだった。
やさしくて、明るくて、……俺の仕事の事を
理解してくれる。
おれには勿体無いくらいの、かわいいひと。