ハナミツ







私が電車で帰るからと言ったら結城さんは
わざわさ駅まで送ってくれた。




「……妻が旅行から帰ってくるみたいで。
ついでです。」


結城さんは人混みなどないかのように
すたすた横を歩いていく。




「新幹線ですか?」



「えぇ。まだ着てないみたいですが。
早く着きすぎました…。時間がまだありますし、珈琲でも
飲んで……。」



結城さんは、どこか真っ直ぐ前を向き言葉を止めた。




「結城さん……?」




「…あれは綾瀬さんですかね。」



目線を外さないまま、向こうを向いたまま言った。



「え………?」





結城さんの見る人混みの先を見たら………













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