ハナミツ
*4th-6 bitter snow(前編)
***6年前***
「蓮花に桃花。有難う。来てくれて」
「「うふふ。」」
私と桃花は顔を見合わせて笑った。
お母さんは劇団に所属していた。
「桜ちゃん!あぁ、蓮ちゃんに桃ちゃん。こんにちは。」
顔馴染みの演出家の小竹さんはいつもは
鬼みたいに怒ってる顔を綻ばせて言った。
「こんにちは。」
「可愛いなぁ!ホントに、ねぇ桜ちゃん。」
「有難う。小竹さん。」
母は控えめに笑った。
吉野さくら。それが母の芸名。
若くして私達を産んで数年したら離婚してしまった。
けど、父は別に母に会うのを反対してないし
母自身も気にしてなかったから、
私と桃花はたまに母に会いに劇団の
練習を見に行っては母と交流を続けていた。
母は儚い感じの美人で、でも芯は強くて
まるでお姫さまみたいに綺麗だった。