ハナミツ
吉野さくら。
押しも押されぬ名女優。
舞台を中心に活躍してるけれど儚い美人ときたら
周りは放っておいてくれない。
芸能界にはそこそこに顔が知られてきている。
「待たせてごめんね、蓮花、桃花。」
「桜さん。」
「はーい、さくらさんでーす。」
若干昭和を感じるポーズでえへと、
ピースをして笑った。
舞台を降りた母は元の私達のお母さんに戻っていた。
劇場では、お母さんとは呼ばない。
これは桃花と2人で決めたルールだ。
父にも言ってない。
「えー、蓮ちゃん華道の展覧会があるの?
行きたい、行きたーい。」
「お母さん大げさ……。」
「ホントホント。」
もーとぼやく、母に私達は顔を見合わせて笑っていた。
舞台の練習が終わっての晩ごはん。
母のマネージャーの少しアンパンマンに似た男性
佐々原さんの運転する車でのお喋りが
私達の楽しみだった。