ハナミツ
*****
たまたまわたしが華道の用事で遅れて、
母の練習を見に行けなかった日。
きっとあの日が引き金だったのかもしれない。
私は、慌てて劇場の裏口から入り客席に行こうと
した。
劇団の人に挨拶をして通りぬけようとしたら
近くの控室の通路から桃花の声がした。
母の笑う声がしたから、ホッとして行こうとした。
「やぁやぁ、全く気が付きませんでしたよ。
こんな可愛い子がキャストのお子さんなんてねぇ。」
「有難うございます。
でも、本条さんこの子は駄目よ。
大事な大事な皆のアイドルだから。この劇団のね、」
「…えー、私は、アイドルやりたいなぁ。」