ハナミツ













*****







「蓮ちゃん、いま話し出来る?」




舞台練習が終わり、母は珍しく私を呼び止められた。




「なに?」



「……桃花のこと、蓮ちゃんに
言わないで決めちゃったから。蓮ちゃん、
怒ってるんじゃないかって思って……。


その、真琴君から少しだけ聞いて。」




「………。」




「ごめんなさい。蓮ちゃん。偶々
あの人がいた時に桃花が来ちゃって……。

あの人、結構無茶なこと言う人で、」











「……」






ー街灯に虫が寄ってくるみたいな…。





明るい光、




私にはないもの。
母や桃花は持っているもの。



持っているものに気付かない人間は幸せだ。
持っていない人間の寂しさなんか知らないから。








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