ハナミツ
「蓮。」
はっとした。
ぼうっとしてたら父がはいと、花をくれた。
今日は早上がりだったため気分転換のため
実家兼花屋の『藤ノ屋』に帰って来た。
父も花屋を営んでいるのだ。
「桜…。」
「春って気がするだろう、桜って。
アレンジはいくらでも出来るよ。
そういや、今日山瀬のじいちゃんが桜買いに来たよ。奥さんの墓にお供えするんだって…相変わらず洒落てるなぁって思うよ。
それはそうと、蓮花は今日は元気がないね。」
「…いまはちょっと元気がないかも。」
「……そうか。」
お父さんは、よいしょと作業机の椅子から
立ち上がりキョロキョロと辺りを見回した。
「今日は早く閉めようかな。誰も来ないだろう。」
「お父さん」
「大丈夫。店は黒字だからな、お前に心配してもらわなくても」
少し意地悪そうにシャッターを閉めながら笑った。