ハナミツ
あの時、こうなるなんて思わなかった。
ぼんやり思いながら、体を洗いお風呂から出た。
美咲と選んだ下着を付け(とりあえず)、
パーカーとさっき着ていたワンピースを着て
リビングに行った。
顔があつい。
リビングに続くドアを開けようとしたら、
ガラス張りのドアの向こうに直昭さんが見えた。
ソファに座り紙の束を見て、ボールペンを持って書き物をしている。
仕事…かな。
そうだ、直昭さんは声優でアニメやライブ以外にもラジオとかドラマCDとか、色んな種類の仕事がある。
チェックする書類の量は普通のサラリーマンよりも多いんじゃないんだろうか。
横顔が真剣で、声を掛けるのをためらってしまう。
…弱気になっちゃダメだ。こんなこといくらでもある。
これから先、こんな思いたくさんする。
せめて、負担にならないようにしよう。
お茶でも入れよう。それくらいなら大丈夫なはずだ。