ハナミツ








お姉さんが御手洗で席を立った時に直昭さんは
ごめんな、と言った。



「直昭さん」



「...全く。急に事を進めるんだから。姉さんは。」




「いえ、だ、大丈夫です。お姉さん優しかったし、私も挨拶しなきゃって思ってたから。会えて良かったです。」


「......そう?」


「こないだ直昭さんの家で紅茶の事、お姉さんのおすすめだって言ってたの聞いて、お姉さんと仲いいんだなって。

お姉さんだけじゃなくて、結婚記念日の事もあったからか直昭さんのお家はあったかいんだろうなって勝手に思ってたんです。だから、...」





店内のBGMがギターの聞いたことのあるメロディーが有線で流れる。



直昭さんは頬杖をつき、髪をくしゃくしゃとかく。


「そんなかわいいこと言われたら、飯より蓮花が食べたくなる」






「え、あ、......あの。」



横顔で私を見る彼はずるいと思う。



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