ハナミツ





お父さんがはじめて、
お母さんをご飯に誘った時。


ご飯にお金をかけてしまって、
他に渡すものが思い付かずに近くの花屋に行きたった1輪の薔薇を渡した。




まだ咲く前の蕾の薔薇と、かすみ草だけの花束に
お母さんはいたく感動して泣いてしまったらしい。






不器用な男の人からの精いっぱいの贈り物に、
お母さんはお父さんを好きになった。





たった一回だけの一輪の花。



お母さんはずっとそのことを覚えていて、結希さんに繰り返し話していた事を打ち合わせた時に聞いた。







「.........。」



直昭さんのお父さんは
おずおずと花束を受け取った。



「金がなかったことをおれは恥じていたのに、あいつは...それをいい思い出として覚えていたんだな。」




「母さん未だに話すのよ?ラブラブなんだから、羨ましいわよ。」







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