ハナミツ
彼が去っていくのを見た後におれは反対の方に歩く
キスもセックスもしてない、知ってる。
ただ、彼女の苦しい頃に
手を差しのべることの出来た彼に嫉妬している。
掌にくしゃと紙の潰れる感触がした。
「あ、綾瀬さん。よろしくお願いしまーす」
「よろしくお願いします~。」
掌を握りしめたまま、笑みを浮かべる自分に
霹靂しながらスタジオに向かった。
ー直昭さんのものにしてください。
俺のものになりたいなら、全部ちょうだい。
ひとつじゃ駄目だよ。
欲張りなんだ、
「......。」
このままじゃ、満たされる前に奪って
きみを壊してしまうから。
<綾瀬目線おわり>