ハナミツ
穏やかに笑うタツはどこか女性的で、すべてお見通しみたいだ。
「………お前専門の頃からずーっとこの仕事つきてぇって言ってたもんな。馬鹿みてぇに」
「仕事はお前のが早く貰えてたから余計にな。俺は元がこんな声だから…悪目立ちしかしなかったし、」
「ばーかそれは、運だろ?…俺は、お前みたいなラスボス級低音が羨ましいぜ。」
「ありがとうございます。」
「うわ、嫌味。」
タツは苦笑してチューハイを飲んだ。
ー私がいたかったからお礼言わなくてもいいんですよ
あの時肩を抱きしめた時の熱を思い出す。
あったかくて、優しい声がした。
おれは
なにをしたいんだ。
仕事か?
蓮花から離れることか?
「でも、なんとなくお前が羨ましい気もする。」
「へ、」
間抜けな声出しやがってとタツは、はぁとため息をついた。
「それだけお前が本気で悩むくらいすきな人が出来たってことが羨ましい。正直嫉妬するンですけど?
オレも出会ってみてぇな、そういう娘、
そういう…自分の体まるごと全部をかけて愛したいって思える娘。」
「体まるごと全部って、大袈裟じゃねぇ。さすがにそこまでは…」
「大袈裟でもなんでもいいじゃねぇか。好きになっちまったんだから、もう形振り構ってらんねぇだろ。
取られたく無かったら大事にするしかねぇ、それだけだ。」