ハナミツ
知らないから怖い。
だから知りたくない。
そう思っていた。
けど、蓮花は最初からそんなこと考えないで自分を助けてくれた。会ったときに俺が彼女を助けたという理由だけで。
ただそれだけで。
覚えているだろうか。
あの日ー
***
「女の子が怪我したぞ!!」
「綾瀬さん、大丈夫ですか?」
呆気に取られた俺はぼうっと倒れた蓮花を見ていた。
彼女の右足に照明のライトが落ちてきたのだ。
あの位置にいたら俺が怪我をした。
ショックで気を失っただろう彼女は倒れたまま動かない。
「誰か!担架持ってきて!」
「開演時間をーー」
「綾瀬さんは楽屋に、調整しますから…」
誰かが俺に話しかけた。顔がみんなぼやける。
「すみません!うちのスタッフが!!」
しっかりした男の人の声がした。
蓮花に駆け寄って来る。