ハナミツ
イベントはどうにか無事に始まった。
イベント中オレは笑いながら仕事をしていた。
強ばってしまう表情を元に戻そうとしないといけないと言い聞かせる。
彼女は大丈夫なのだろうか。
命に別状はないとは思う……思うのに。
心配が頭から離れなくて、話を振られてとぼけた振りをして笑いながら冗談を言う。
お客さんが笑ってくれたことにホッとして周りを見る。
ふと何かの香りが鼻をかすめた。
甘い香り……横の人からする?いや、違うこれは花の香りだ。
コサージュとしてジャケットに飾った花からする香りだ。
照明が落ちてくる前に悲しい顔でオレに付けてくれた飾りの花。
ー素敵なイベントになるように祈っています。
そう言って彼女が付けてくれたコサージュ。
しっかりしなきゃ。
イベントが終わったら真っ先に彼女の元に行く。