ハナミツ
思考が止まってしまった。
「………だ、どどどどうして!!!」
「……彼女だから」
「でも!……直昭さんは、」
芸能人なのに。
言う事を遮るみたいに直昭さんは顔を上げ、ふっと苦笑した。
「俺は大丈夫だから。蓮花が持っていても何にも不便が無いように事務所には話したし、マネージャーさんにも話は通してる。元々渡そうとは思ってたんだ。」
掌にあるキーケースはきらきら光っている。
「……でも、」
「蓮花。」
「はい。」
「オレはね…誰かに優しくされたり、甘えたりするのが苦手でね、家族はべつだけど。
こないだ姉ちゃんにも電話した時にも言われた。
ひとに優しくされろって。
それは弱いことじゃない、優しくされた事で自分が大事にされてることに気付いて他の誰かにも優しく出来るんだって。
オレにはそれが足りない、だから周りが心配するんだって。」