ハナミツ
「行かないで」
小さい声だけど聞こえた。
「はい。」
「……、」
お腹に両手を回し身体をくっつけた。
直昭さんはこちらを向かなかったけど、何も言わなかった。
「……。」
「暑くなったら言ってくださいね、離れますから」
「……大丈夫。」
「どこにも行かないです。…もし行ったとしてもそれはきっと直昭さんと一緒に…」
「………。」
「もしも1人で出掛けたとしても、帰ってくるのは直昭さんのお家に帰って来ます。……これからは、ずっとそうしたいです。ご飯食べて話して一緒に過ごす時間が増えますね。」
直昭さんのことを、もっと近くで見ていられる。
遠いのはあなたの事をまだ知らないから。
もっと近くにいきたい、
「蓮花」
「はい、」
直昭さんは私がお腹に回していた手をほどき向き合うようにこちらを向いた。まだ目元が赤い。