ハナミツ
「……手放したらいいじゃないですか、どうせ満足したら放り出すんでしょう。」
「放り出す?」
「彼女の母は、あなたのように仕事が好きなひとだった。仕事を愛していた。でも家族や彼女は仕事より愛することができなかったから、離れてしまった…そして居なくなった。分かってるんです蓮花は。
いつか大事にされていても、あなたが自分の手を離してしまうかもしれない。桜さんみたいにまた自分は置いてけぼりにされてしまうって。」
「………。」
「僕は蓮花を責めたこともありました。でもそれが間違いだった事に気付きました。彼女のせいじゃない。押し付けることは間違ってる、自分だって桜さんがいなくなって悲しかったし後悔しかなかった。その事を無責任にぶつけても許してくれそうな彼女にぶつけた、最低な事をした。」
分かった……。
俺が立花くんと蓮花を羨むわけが。
悲しみの共有だ。
過去に繋がっていた、そして大事な人をなくした。彼も蓮花も。
その事を同じ悲しみとしてわかり合うことが出来る。
ーごめんなさい、会わないって約束できません。
自分にはそれが出来ないのが辛いんだ。
どんなに愛していても、どんなに優しくしても傷に触れられない。癒してあげられない。
彼女に寄り添いたいのに、蓮花と俺との間に横たわる過去を越えられない。