ハナミツ
ハッとした。腕時計を見たら10分も経ってなかった。
カチャッと音がした。目の前のテーブルに湯のみ茶碗が置かれた。
「母さん・・・ごめん、俺」
「直は考え事する時いつも真剣なのね。変わらないわね」
母は困ったように笑った。
「仕事のこと?」
「違う。好きな……人のこと…」
「あらやっぱり。結希が言ってたからそうだったのね。」
「……うん」
「結希がね言ってたの、かわいい女の子でお花屋さんなんだって素敵ね。良かったわね。」
「ありがとう。」
「直、直がしたいようにしなさい?」
「え…?」
俺は湯のみ茶碗を、置いて母を見た。
「初めて声優になりたいんだ!って言った時と同じ目して考え込んでたんだもの驚いちゃった。よっぽどその子の事が好きなのね。直が仕事と同じくらいの気持ちを持てる人が出来たのうれしいな。ずっと頑張ってきたものね。直昭」