ハナミツ




ハッとした。腕時計を見たら10分も経ってなかった。



カチャッと音がした。目の前のテーブルに湯のみ茶碗が置かれた。


「母さん・・・ごめん、俺」


「直は考え事する時いつも真剣なのね。変わらないわね」

母は困ったように笑った。

「仕事のこと?」

「違う。好きな……人のこと…」
「あらやっぱり。結希が言ってたからそうだったのね。」


「……うん」

「結希がね言ってたの、かわいい女の子でお花屋さんなんだって素敵ね。良かったわね。」


「ありがとう。」

「直、直がしたいようにしなさい?」

「え…?」


俺は湯のみ茶碗を、置いて母を見た。

「初めて声優になりたいんだ!って言った時と同じ目して考え込んでたんだもの驚いちゃった。よっぽどその子の事が好きなのね。直が仕事と同じくらいの気持ちを持てる人が出来たのうれしいな。ずっと頑張ってきたものね。直昭」












< 656 / 668 >

この作品をシェア

pagetop