ハナミツ
目を閉じ、手を離した。
コサージュは完璧に飾れた。
彼への感情は消して。
大丈夫。
「……終わりました。
素敵なイベントになりますように祈っています。」
言葉と同時に、一礼した。
あぁ、大丈夫。
少し気持ちは乱れたけど、いつも通り。
目を開け、顔を上げ笑う。
そういえば、
小さな頃、何度もしてきた。
この顔。
何回も、何回も。
ずっと優しいあの顔を困らせないように。
ワガママを望んだら、困った顔をして頭を撫でて
抱きしめてくれた彼女のために。
綾瀬さんは黙ったまま、私を見ていた。
私は立ち去ろうと踵を返し出口に向かった。
気を抜いたら、泣きそうになって。