君がくれた約束[続編]
私の手はそこで止まり、冷静な振りをしてシュウに聞く。
「ねぇ、シュウ。この女の子ってシュウと噂になってた子だよね?」
すると、シュウの顔色が雲っていくのが分かった。
「…シュウ?」
『ただの噂だよ』
そう言ってくれないの?
シュウは黙ったままアルバムを閉じて、本棚に戻して言った。
「倫子さんが気にする事じゃないよ」
「…うん」
シュウに聞きながら私は思ったんだ。
シュウにもし、離れていた頃の事を聞かれたらどうする?
どんなに好きでも、ううん、好きだから言えない事もある……。
今ここに居るのが噂になった女の子じゃなくて、私なんだからいいんだよ。
私は自分にそう言い聞かせた。
「倫子さん、お風呂入る?」
「うん!」
「じゃあ、お風呂入れるね」
そう言って何も無かったかのように、シュウはお風呂場に向かう。
ほらね、これで良かったんだよ。
自分が知られたくない過去があるように、シュウにだってあるんだ。
でもそれが二人にとって、どんなに深い溝なのか私は知らなかった。
ただ、知りたくなかっただけなのかもしれない……。