この恋を叶えてはいけない
プロローグ
 
「ねえ……」
「ん?」
「少しは悲しんでくれた?」
「……べつに」


あたしの隣で、ぶっきらぼうに答える彼。

その顔色をうかがいたくも、きっとお互いに見ることは出来ない。



「いままでありがとね」
「なんだそれ」
「ふふっ、なんとなく。
 こういう場面ってドラマとかでよくあるでしょ?」
「……テレビの見過ぎだ」



出てくる言葉は、
どうでもいい話。



「……なあ」
「何?」
「もし今ここで……」



聞いてはいけない言葉。
言ってはいけない言葉。



「時間ですよー」



あたしたちの言葉を止める第三者の声。


あたしは返事を返す。



「……行く、か」
「……………うん」



扉が開かれ、
多くの人の拍手が巻き起こる。




あたしは今日






世界で二番目に好きな人と

結婚をする。

 
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