この恋を叶えてはいけない

「べつの男のことでも考えてた?」
「……」


何も答えられないでいるあたしに、貴志は苦笑すると、散らばった服をあたしに投げる。


「別に、責めるつもりもねぇよ。
 もともと悪いのは俺なんだし

 だけどさすがに、な」

「ぁ……」


苦笑する貴志に、罪悪感が急に襲った。


「……ご、めんっ……」


今になって、自分がやっていた行動に恥じる。


元彼に、別の人を重ねて抱いてもらおうなんて
あたしはなんて、浅ましい女なんだろう……。
 


「いいから早く服を着ろ。
 抑えんの、結構辛いんだから」


切なそうに微笑む貴志に、あたしは涙を堪えると、すぐに服を身につけた。


そこには、焦点の合っていなかった貴志は、もうどこにもいなくて……



「ほんと……ごめんな。
 唯香がいるってのに、あんなことして……」


「……謝るの、遅いよ」


「そうだよな」


あたしの好きだった、
少し子供っぽく笑う貴志がいた。
 
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