この恋を叶えてはいけない
「ほら、早く帰れよ。
俺の気が変わる前に」
「……うん」
散らばった自分の荷物を、再び紙袋に詰めると、あたしはすぐに玄関へ向かった。
貴志はベッドの端に座ったままで……。
「貴志」
名前を呼んでも、顔をあげることはない。
「ごめん、ね」
一言謝って、部屋を出た。
浮気をされて、腹が立ってたはずだった。
やり直せないと言っているのに、それでも抱こうとした貴志が怖かった。
だけどあたしの中に残る
とんでもない罪悪感。
貴志の腕の中で
駿に抱かれることを思うなんて……
「あたし……バカだっ……」
溢れてくるのは、自分に憤りを感じる涙だった。