この恋を叶えてはいけない
 
「ほら、早く帰れよ。
 俺の気が変わる前に」

「……うん」


散らばった自分の荷物を、再び紙袋に詰めると、あたしはすぐに玄関へ向かった。

貴志はベッドの端に座ったままで……。


「貴志」


名前を呼んでも、顔をあげることはない。


「ごめん、ね」


一言謝って、部屋を出た。





浮気をされて、腹が立ってたはずだった。

やり直せないと言っているのに、それでも抱こうとした貴志が怖かった。


だけどあたしの中に残る
とんでもない罪悪感。



貴志の腕の中で
駿に抱かれることを思うなんて……



「あたし……バカだっ……」



溢れてくるのは、自分に憤りを感じる涙だった。
 
< 120 / 326 >

この作品をシェア

pagetop