この恋を叶えてはいけない

「いたっ……」


何もない道につまずいて
そのまま跪(ひざまず)いた。


起き上がる気力もなくて、地面に俯いたままうなだれる。


こんなにも最低な自分が嫌だ。






「唯香……?」






頭上から聞こえた
今一番聞きたい人の声。


だけど一番聞いてはいけない人の声。


顔をあげるのが怖くて、その声はしっかりと耳に届いているのに顔をあげられない。


さっきよりも近くなった場所で
その声はもう一度あたしの名を呼んだ。



「唯香……。どうした?」



ああ……
どうして……


この声が幻聴じゃないんだろう……。






「………しゅん…」





見上げた先にいたのは、
この世で一番愛しい人の姿だった。

 
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