この恋を叶えてはいけない
 
「ねえ」
「なぁに?」


持っていた缶ビールを飲み干し、さらにもう一本を開けている。

明日はせっかく仕事が休みなんだから、今日は大目にみてやろう。

そう思い、次々とビールを開けるお母さんを止めることはしなかった。


「お母さんはさ……
 何かしたいことってないの?」

「なにそれ?
 好きな仕事をしてるんだから、それ以上のものなんてないって」


「んー……
 じゃあ……幸せなこととか、は……?」


自分に、負い目があったからだと思う。

そんなことを聞いたのは。



あたしがしていることは、母への最大の裏切り。

世間から背徳される想い。


だからせめて……
それ以外で親孝行を……。






「お母さんは……

 唯香が普通に恋して……
 普通に結婚して……

 可愛い子供を産んで、お母さんに孫の顔を見せてくれたら……


 それ以上の幸せはないわよ」


 
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