この恋を叶えてはいけない
 
疲れた体に、シャワーはやっぱり気持ちがよくて
本当は湯船も張りたいところだけど、平日はどうしてもそんな余裕はない。


だからシャワーを浴び続けながら、髪を洗い流し、体も洗った。


きゅっと蛇口を閉めたとき、

パタン……

と、部屋のほうから物音が聞こえたような気がした。


それは気のせいかと思えるほど、ごくわずかな音で、
少し緊張しながらもバスタオルで体を巻くと、そっと部屋を覗き込んだ。


だけど緊張は意味もなく
部屋の中には誰もいない。

狭いこの部屋に、隠れるような場所なんてないし
玄関へ目をうつしても、人がいたような気配はなかった。

 

でも……



あれ……
あたし、鍵開けっ放しだったっけ……。


しっかりとドアは閉められているけど
鍵は開いた状態で……。



カチャリと閉めてから
ほんの少しだけ胸騒ぎがした。



大丈夫……。
今のは風の音か何か……。


確かに窓は開いていて、外から入ってくる風でカーテンがゆらゆらと揺れている。

パタパタと揺れるカーテンが、目の前のタンスにぶつかってカタカタと音が鳴っていて……



多分、この音だよね……。



怖さのあまり、そう思うことにした。
 
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