この恋を叶えてはいけない
15章 踏み出し
「すみません……。
上がりました」
「お、おう。
ってか、ここは唯香ちゃんちやから、俺に気ぃつかんといて」
なんて言ってるけど
それはやっぱり無理な話。
だけどなるべく、平静を装った。
寝る前に、パスタを茹でて、
買ってきたお弁当とともに、戸村さんとつついた。
「じゃあ、故郷の大阪で働けると思ったら、結局東京へ出戻ったった感じなんですか?」
「そーそー。
まあ、出世ってことやから断らへんかったけど。
せっかく大阪で仕事見つけたのに、意味あらへんかったなーって」
「ですね」
大阪支店から、東京の本社に来ることは、確かに出世を目指す男の人にとってはうってつけの話。
みんなが本社を目指して働いている。
けど……
戸村さんの場合は、確かに複雑な感じだ。