この恋を叶えてはいけない
 
「で?これからどないすんの?」
「これから、っていうのは……」

「ストーカー。
 この家知っとるんやろ。

 引っ越したほうがええんやない?」

「……ですよね…」


やっぱり、知られている家に住むのは怖い。


このアパートに住んで3年。
完全に住み慣れて、ハッキリ言って引っ越すのは惜しいけど……。


「今日、帰りに不動産屋寄っていきます……」


自分の身の安全が第一。

慣れ親しんだ部屋を出ることにした。




「………家に来ぉへん?」


「え……?」




突然の提案に、聞き間違いかと思って顔を上げた。


戸村さんは、ほんの少し頬を染めてて……



「いや、ほら……

 一人とか、怖いかと思うて……。

 俺の部屋も、一つ余っとるし」


「……」



もしもあたしたちが、付き合っていたら、その返事にOKを出していたかもしれない。

だけどまだ、曖昧な状態でそれを引き受けるわけにもいかないので……



「それは……遠慮しておきます」



と答えた。
 
< 223 / 326 >

この作品をシェア

pagetop