この恋を叶えてはいけない
「唯……」
戸村さんは、ゆっくりと振り返り、あたしの頬を捉えた。
その顔は、どことなく照れているような顔で……
「それじゃあ、とりあえず……
戸村さん、って呼ぶのはやめようか」
「あ……」
気づけばまた、彼を呼ぶ名前が苗字に戻っていた。
抱かれているときは、名前で呼んでいたのに……。
改めて名前で呼ぶのは、慣れないあたしにとってやっぱり少し恥ずかしくて……
でもこれからこの先、この人の隣にいることを選んだから……
「………陵…」
彼の呼び名は、
近しい距離でありたい。
「唯香……」
いつも「唯」と呼ぶ彼も
あたしを「唯香」と呼び、
「好きや」
そう言って、
あたしの唇に優しいキスを落とした。