この恋を叶えてはいけない
「戸村さん、この前のプレゼンの話なんですが……」
「はいはい、なんや?」
「戸村さん!ちょっと聞いてもらいたいんですけど!」
「んー?」
会社に着くなり、社員に詰め寄られる陵。
入り口で別れると、あたしもさっさと席に着いた。
「朝からモテモテだねー。戸村さん」
「ねー。あんなでも、仕事はできるから」
「あんな、って……。
カッコよくて仕事もできる男なんて、そうそういないよー?
しかも関西弁が余計にポイントあげてるし」
「……」
気づけば、陵はチームリーダーになっていて、いつも周りに人が集まっている。
確かに仕事モードの陵はカッコいい。
口調はそのままだけど、パソコンに向かう姿や、資料に向かってダメ出しをしているところ。
辛口なのに励ましの言葉も忘れずに添えるところなど、後輩からもすごく慕われていた。
「いいなー。あんな人が彼だなんて……」
「……」
その言葉にただはにかんだ。
本当に……
あんなすごい人があたしを好きでいてくれるなんて
奇跡に近いんだ。