この恋を叶えてはいけない
 
「うわ……
 これはひどい……」


結局、仕事が終わったのは8時前になってから。

それでも平均すれば早く切り上げられたほうで、まだまだ会社に残っている人もいた。


会社から駅はわりと近いので、すぐに電車に乗ることはできたけど、
問題は家の最寄駅から自分の家まで。

歩くと、7分くらいの場所。


こりゃ、傘の意味なんてなさそうだな……。


なんて思いながらも、一応は傘をさして、
ほとんど見えなくなった視界の中、必死にマンションを目指した。




「ついた……」


びしょ濡れになりながらも、なんとかたどり着いたマンション。

部屋に入ったら、お風呂直行だな。

郵便受けを開けながら、そんなことを思って入ると、
ふいにオートロックの自動ドアが開いた。

マンションの住人が入ってきたと思って、挨拶をしようと顔を上げた先にいたのは……



「あ……」
「……よ」


ちょうど帰宅しきたであろう、びしょ濡れの駿だった。
 
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