この恋を叶えてはいけない
 
「さみしゅうなぁ……」
「まあ、ね……」


いくら4年の月日が経ったとしても、お母さんと過ごした日が色あせることはない。


今ですら、時々思い出しては泣くこともある。

だけど……



「陵が傍にいてくれるようになったから……

 だいぶ寂しさもなくなったよ」



その言葉に、嘘はない。
 

陵はその言葉に微笑むと、横に並ぶあたしの頭をこつんと引き寄せた。

あたしの頭は、陵の肩に傾いたまま、一緒にお母さんの眠るお墓を見つめる。


「唯……」
「んー?」


綺麗になったお墓を見つめながら、陵が口を開いた。


「あんな……」


その声は、いつもより少しそわそわしているような気がして、もたれかかっていた頭を上げた。

見上げると、少しだけ頬を染めた陵が、真剣なまなざしであたしを見つめていて……。



「ほんまは……もっとロマンチックな場所とかシチュエーションとかで考えてたんやけど……
 唯なら、ここで言うのが一番ふさわしいと思うて……今日この場で言うわ」

「え?」



いきなり何を切り出されるのか、頭にハテナマークを浮かべながら陵を見上げた。

陵は、コホンと咳払いをすると、あたしの真正面に立つ。

そして……





「唯香……


 俺と結婚してくれへんか……?」





その言葉とともに、風がサァーッとなびいた。
 
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