この恋を叶えてはいけない
(貴志ー、あたし忘れ物しちゃったみたいでさー……)
いつものように貴志の家に泊まって、家に帰ろうと電車に乗り込もうとした。
だけど定期が鞄の中に見当たらず、貴志の家に置いてきたんだと思い浮かぶ。
すぐそこだったし、とくに連絡しないで貴志の家の玄関を開けた。
(ゆ、唯香ッ!?)
あたしの目に、知らない女の人のサンダルが映ったとともに、必要以上に驚く貴志の声。
ゆっくりと顔を上げたそこには……
(………え?)
見たことのない女の人が、貴志の隣に座っていた。
(……貴志、この人誰?)
(え?あ、いや……ともだ、ち……)
同じように、貴志と呼ぶ彼女が、貴志に問い詰めると、そんなふうにあたしのことを紹介する。
友達……?
あたしって、貴志にとってお友達だったの?