この恋を叶えてはいけない
 
「陵……」


少し不安になりながら見つめる陵を、あたしもじっと見つめ返した。

真剣なあたしの表情を見て、陵の顔はいっそう不安の色を増す。
だけどたじろぐことなく、言葉を続けた。



「覚えてる……?
 あたしと陵が付き合う直前に言ったこと……。

 大阪出張に行った日の夜……」


「………ああ…」



陵は、ハッとしたように目を見開くと、また目を細めて頷いた。
 

 
「あたし……
 好きな人がいる……。
 だけど絶対に叶わない人だって……」

「ああ」

「この先もきっと、
 彼を忘れることは出来ない」



その言葉に、陵は頷かなかった。

というよりは、頷けなかったんだと思う。
もうすでに、見ているだけで苦しそうな顔をしているから……。


でも伝えたいのはそこじゃない。

あたしが本当に伝えたい想いは……

 


「だけど……

 彼を思い出にすることはできる」




これを、あなたに伝えたかった。
 
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