この恋を叶えてはいけない
「じゃあ、打ち合わせしたとおりで。
会場の準備が整いましたら扉を開けますので、スタンバイしておいてください」
「はい」
スタッフの人も、一度会場のほうへ入ってしまって、
閉じられたチャペルのドアの前に、二人で立っていた。
亡き父の代わりに、あたしと一緒にバージンロードを歩くのは、兄であるのが常識。
「ねえ……」
「ん?」
「少しは悲しんでくれた?」
「……べつに」
あたしの隣で、ぶっきらぼうに答える駿。
その顔色をうかがいたくも、きっとお互いに見ることは出来ない。
「いままでありがとね」
「なんだそれ」
「ふふっ、なんとなく。
こういう場面ってドラマとかでよくあるでしょ?」
「……テレビの見過ぎだ」
出てくる言葉は、
どうでもいい話。
本当は、こんな話がしたいわけじゃないのに……。