この恋を叶えてはいけない
2章 悲劇的な再会
「唯香ー!準備できた?」
「あ、ちょっと待って!」
夏が終わる頃、
バタバタと部屋を駆け回るあたしとお母さん。
慣れない喪服に身を包んで、ピアスを外しパールのイヤリングを耳にする。
小さな黒のバッグに数珠とハンカチを入れ、立ち上がった。
「こんな暑い日に……嫌ね」
「……うん」
少しだけ微笑を浮かべた母の顔は、何とも言えない複雑な表情で、あたしも苦笑いで返した。
残暑が厳しい暑さの中、黒い服を身に着け外に出る。
セミの声もまだ聞こえ、慣れ親しんでいない土地へと電車に乗って向かった。
今日は……
お父さんのお葬式。