この恋を叶えてはいけない
「なんか……全然実感わかないや……」
駅を降りて、お母さんと一緒に葬儀場まで歩く。
実の父親が亡くなったというのに、悲しいとかそんな感情にならないあたしは、冷たい人間なんだろうか。
「仕方ないわよ。
もう15年も会ってないんだから……。
思い出も……幼すぎて残ってないのは当たり前」
「……そういう…ものかな……」
なんとなく、思い浮かぶ父の顔。
だけどそれは、はっきりとしたパーツで思い浮かぶわけではなく、ゆらゆらと揺れる水辺にうつった姿みたいに、かなりぼんやりとした姿で……。
「会ったら……泣くのかな……」
その質問には、お母さんは苦笑しているだけだった。