この恋を叶えてはいけない
 
葬儀開始の時間となり、お坊さんも現れる。

そして長いお経が始まった。


実感が湧かないまま、葬儀の時間は流れ、ただぼーっとお父さんの写真を見ていた。

途中でお坊さんがちらりと振り返り、前の人に合図を送っている。

そして一番前に座っている人が立ち上がった。



お焼香か……。

あれ、よく手順が分からなくて苦手なんだよね。



そんなふうに思いながら、動き出す人の影を追っていた。


最初に立った人、おそらく喪主にあたる人が来場してくれる人に挨拶をするために振り返る。






…………え…?






この時ほど

自分の目を疑ったことはなかった。

 
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