この恋を叶えてはいけない
あたしが母と呼ぶ人を
彼も「母さん」と呼ぶ。
その意味は、なんなんだろうか。
頭の中ではとっくに理解してて
それから逃げるように、足元がじりっと後ずさった。
それに気が付いて、彼があたしへと視線を変える。
「……!!」
あたしの姿を見て
お母さんを見た時よりも大きく目が見開いていた。
「あ、っと……
きっと駿は覚えてるわよね。
もう7歳だったんだから」
お母さんは、あたしと彼の視線が絡み合っていることに気づくと、ようやく紹介をし始めた。
もうすでに予期している言葉に、足が逃げ出そうとしている。
だけど唇を噛んで、彼の顔を見つめ返した。
「唯香……。
唯香はもう、記憶にはないのかもしれないけど……」
やめて。
言わないで。
「彼は、大沢駿。
あなたのお兄ちゃんよ」