この恋を叶えてはいけない
 
「もう大丈夫なのか?」

「何が?」

「元彼のこと」


話題を少し逸らして、忘れかけていた貴志の話。

あたしはちらりと駿の顔を見ると、



「ん。
 もうあれから泣いてない。

 すっきりもしてるし」



ただの強がりなんかじゃなくて
本当に平気だって思えた。


「それはよかったな」

「……ありがと」

「いや。なんもしてねぇよ」


あの日、駿に逢えたから、乗り越えられた。



「でもよかったよ」

「何が?」





「お前のこと、

 好きになる前で」






ズキン、とナイフで胸をえぐられた気分になった。

 
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