この恋を叶えてはいけない
そう。
あの日出逢った男は
下の名前のみ知っている素性の知らない男。
だから思い出としてもつ必要もない。
「おにいちゃん、か……」
まったくピンとこない話。
自分に兄がいたなんて。
思わずつぶやいた名前に、駿は振り返ると
「それ、懐かしいな」
って、ふんわりと微笑んだ。
イケナイ。
ときめいたりしちゃ。
あたしたちは生き別れであった
正真正銘の兄妹。
「ま、駿って呼ぶけどね」
「なんだそれ」
決してお兄ちゃんと呼ばないのは、
関係を認めたくないわけじゃないんだから。