この恋を叶えてはいけない
 






「唯香ー!」


夏休みが終わり、久しぶりの大学。

一人教室の端に座っていると、なじみのある元気な声が聞こえた。


「久しぶりー!会いたかったよー!!」
「くるしっ……」


そのまま突進され、力いっぱい抱きしめられる。

首に回された手は、絞められるんじゃないかと思う力で、腕をポンポンと叩いた。


「ごめんごめん、
 嬉しくて力が入っちゃった」

「あのねー」


ようやく体を放し、かわいらしく微笑む。

彼女は、宮野巴(ミヤノ トモエ)。
大学では一番仲が良く、ほとんどの講義を一緒にとっている。



「ってかさ、ってかさ!」


微笑んでいたと思ったら、今度は慌てた表情。
本当にころころ表情が変わる子だなぁ、と感心した。




「貴志と別れたってほんと!?」




大学後期初日からそれか。

頭をガツンと殴られた気分だった。
 
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