この恋を叶えてはいけない
店に入ってきた駿は、傘を持ってはいるけど、びしょ濡れで、
雨がどれだけすごいかを物語っていた。
「なんで……お前ここで働いてんの?」
「あ…。いつもはI町店。今日はヘルプでこっちに呼び出されて……」
「そうなんだ」
「駿はいつもここに来ること多いの?」
「まあ、な。自炊とかしねぇし」
「そっか」
確かに、駿が料理を作ってる姿は想像つかない。
お父さんがいなくなった今、男の一人暮らしとなってしまえば、お弁当屋さんやコンビニはフル活用だろう。
「唐揚げ弁当」
「え?あ、はいっ」
突然の注文。
すぐに受け答えすると、厨房へ「唐揚げ一つ」と声をかけて、会計を済ませていた。
「雨、すごいんだね」
「ああ」
手を差し出した駿の腕は、やっぱり雨で濡れていて、傘の意味をなしていなことが分かった。
「そういえば、電車」
「え?」
「停まってる」
「嘘!!」
予想外の言葉に驚く。
電車が停まってるって……どうしよう。