この恋を叶えてはいけない
「うわ…ほんとだ……」
嵐の中、ダメもとで駅へ向かって見たけど、やっぱり電車は動いている気配はない。
それどころか、改札内に入ることも不可能なくらい、人が集まっている。
ぐるっとあたりを見渡して、近くの喫茶店等を探して見たけど、そこすらも外まで行列ができていた。
やっぱり、みんな考えることは一緒か……。
「はぁ」と深いため息をつき、これからどうするかと途方にくれた。
こういうとき、いつものバイト先だったら気兼ねなくお店に戻れるけど、さすがに初めてのあの店だと抵抗がある。
とりあえず、ちょっと歩いて、入れそうなお店を探してみるか。
そう思って、引き返そうとしたところだった。
「唯香っ」
突然呼ばれる名前。
傘を上へ傾け、声の主へと振り返った。
「……駿…」
「よかった。すれ違いになんなくて……」
そこには、さっきよりもずっと、びしょ濡れの駿がいた。