初恋の君へ
第1章

春色

高校生になった私は、入学初日から新しい出会いに胸を躍らせていた。

高校のために腰のあたりまで長く伸ばした黒髪は、美容室で念入りに整えたし、この日までに体重を5キロ落とした。

この青春のために今まで努力してきた。

グラウンドから吹奏楽部が奏でる歓迎の曲が聴こえてくる。連れ立って登校する生徒たち。

ここから私はリスタートする。

私が通う学校は、制服がとても可愛い。

茶色のジャケットに、赤いチェックのリボンとスカート。しかも、ジャケットにはおしゃれなエンブレムが付いている。

男子も、女子くらいおしゃれなブレザーで、本当に「少女漫画」って感じだ。



私は、突然、入学式で名前を呼ばれた。

「次は、新入生代表挨拶。新1学年、坂本あかね。」

いきなりのことに戸惑う。

「え…?」

いくら、教頭先生に視線を送っても、「登壇してください。」の一点張りだ。

しかし、「ああ、そうだ」と思い当たるものがあった。

仕方なく、ステージに上り、マイクの前に立つ。

すると、ざわつく生徒たち。

「あの子、すっごい美人!やば!」
「かわいい!」

他の人から見たら、私はうらやましい存在かもしれない。

でも、私は喜べない。

ふと、中学時代のあの頃を思い出す。
息がはあはあと苦しくなってくる。

首位なんかとって、目立ってしまった。

目立っては、いけないのに。

新しい日々は、始まったばかりなのに。

「あいつ、なんでもできて美人だとか、
ちょーウザいんだけどー。」
「イイ子ちゃんヅラしてんなよ!!」

もう絶対にあんな思いをしないように。



新入生代表挨拶も入学式も無事に終わった。

でも…

周りから向けられる好奇の視線。

私は気にしないふりをして、新クラスへ行った。

私のクラスは1-4だった。
まずは、せっせと席を探す。

確か、イスに名前が貼ってあるんだよね。

「坂本…坂本………あった!!」

内心、一番窓側の一番後ろを期待していたけど、名字が「さ行」なのでやっぱり違かった。

教室の真ん中あたり。

次は、隣を確認する。
入学してからの初隣はとても重要。

「かざみ……はる…と?んん?合ってるかな…」
「風見晴人だよ。読み方合ってる。」

独り言を言っていたら、男子の声がそれを遮った。

驚いて顔を上げると、そこには顔の整った、いかにも爽やかな男子が立っていた。
肌はほどよく白く、できものなんか一つもない。身長は175cmくらいの長身で、大きな二重の目を半月の形にして笑っている。

ぽぽぽと頬を赤く染めている私に彼は続けた。

「代表挨拶してた、可愛い子だよね?首位とか、すごいね!俺に勉強とか教えてよ。」
「はいっ…。」

この時、私の声は少し上ずっていたかもしれない。
ドキドキしていた。同時に、新しい日々への期待がまた溢れてきた。

「晴人くんっ、よろしくね!!」

私は、精いっぱいの笑顔を晴人くんに向けた。
すると、晴人くんも微笑む。

「おう!よろしくね!」



この時はわからなかった。あんな事が起こるなんて。

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