初恋の君へ
「じゃー、学級委員決めるぞー。」

教員3年目だという若い男の先生、清水先生が、クラスの担任だった。
ドラマに出てきそうなベタなセリフを言って満足気。
まだ、慣れてないんだろうなあ。

「まず、坂本は決定だよな!!」
清水先生は、ふふんと自信ありげに言い放った。
え?え?ひどくない?勝手に??
戸惑う私に対して、クラスのみんなは賛同の拍手喝采。
まあ、首位だから仕方ない、と自分に言い聞かせる。

「じゃあ、男子は…………」
先生がそう言った途端、目を伏せる男子たち。
あの晴人くんでさえ。
この人たちダメじゃん、と呆れていた時。
「俺、やります。」
後ろの席から聞こえてきた、低音ボイス。
なんか、懐かしいような…そんな感じがする。
わっと教室が拍手でいっぱいになる。
なぜか、響き渡る女子の黄色い声。
まさかと思って、後ろを振り返る。
そこには。

「っ……………」
言葉を失った。
こんなにも綺麗な、美しい人間が存在していたなんて。
後ろの席の方は、そこらへんの、テレビに出ている俳優やアイドルとは比べものにならないくらいの美男子だった。
艶やかな黒髪に切れ長の二重、まっすぐ通っている鼻筋、不敵な笑みを浮かべる薄い唇。
なんでだろう。なにか懐かしい気がするのは。
彼の瞳に吸い込まれそう。

「ってことで、このクラスの学級委員は、坂本あかねと坂本駿で決定だな。」
え!同じ名字!偶然!
男子は「良かったー」と喜びの声。
しかし……

「ウチ、学級委員やれば良かったー。」
「駿くんとイノコリとか、したぁ〜い。」
女子たちは不満気。
あんなにかっこいいんだから、さぞかしおモテになられるんだろうなあ。
っ⁈
今、何か視線を感じた気が…。
まあ、いっか。




「ダブル坂本〜。さっそくだけど、放課後、来週の学年委員会に向けての資料、作っといて〜。資料室にある、去年の資料参考にしていいから。」
と言って、さっさと帰ってしまう清水先生。
う、うそ。今日いきなり放課後2人きりなの⁈

「坂本〜!また明日!学級委員頑張れよ!」
爽やかに笑う晴人くん。
あったかい気持ちになる。
私も笑顔で返す。
「晴人く〜ん!また明日!!」
他の男子も「ばいばい」と言ってくれた。
……男子だけは。
女子はすぐに帰ってしまった。
…まだ始まったばかりだし、大丈夫!だよね…?
不安でいっぱいだったけども、なんとか心を立て直した。


学級委員の仕事をやろうと思ったのに、後ろの方は机に顔を突っ伏して起きなかった。
自分で立候補したくせに〜!
「あ、あの…。学級委員の仕事…。」
恐る恐る話しかける。依然起きない。
寝てるのかな?
もう、この手段を使うしかない!

「わっ!」

耳もとでおっきな声を出してみた。

「…ん…。」
やっと、もうひとりの坂本さんは起きた。
やっとだよ〜‼︎
「学級委員の仕事、やろうよ!」
そう言って、ニコッと微笑んだ。
「あ、ごめんな。寝てた。」





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