*スケッチブック* ~初めて知った恋の色~
棚の奥から、まだ何も描いてない新品のキャンバスを取り出す。

ここに描きたいものはずっと前からあった。

何度も何度も頭をよぎっていた風景。

だけど、勇気がなくていつまでも描けなかった。


あの日……。

あの雪の日に、1人で中庭のベンチに腰掛けていたシィ君。

あの風景は今でも鮮明に記憶に残っていた。


うん。

あれを描こう。

粉雪がシィ君を包んでいた、あの静かな中庭の風景を……。


そして絵が完成したら……

気持ちを伝えたい。



おー! 

この決心って、一歩どころか、百歩前進って感じじゃない?


白いキャンバスにそっと頬を寄せてみる。


おまじないのつもりだった。


“どうか

わたしの心が

あの人に

伝わりますように“



……なんてね。
(恋する乙女の暴走は止まらない)




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