*スケッチブック* ~初めて知った恋の色~

・糸くずマジック

――――…

あれは

3月だというのに

とても寒い日だった。


色の無い

寂れた景色の中に

彼がポツンと

ベンチに座っていた。


雪が

チラチラと舞って

彼を優しく

包んでいた。


…――――


スケッチブックには描きとめなかったけど、今も鮮明に記憶している風景。


目の前にあるキャンバスに色を重ねながら、自分の中にあるイメージを描いていく。



「……ふーん。いつの間にか、そんな絵、描いてたんやぁ……」


その声に反応して、大袈裟なぐらいわたしの体はビクンと跳ねた。


恐る恐る、声のする方を振り返る。
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