*スケッチブック* ~初めて知った恋の色~

・ケンちゃん

――コンコンッ


窓を叩く音に振り返る。

今日はもう帰ろうとして、美術室のドアの近くまで来ていたわたしは、足取りも軽く、窓辺に向かう。


「ケンちゃんっ」


にまーって、白い歯を見せて笑ういつもの笑顔。

こっちまでつられてしまう。

わたしは最近、ケンジ君のことを「ケンちゃん」って呼ぶようになった。

なんか、その方がしっくりくるんだもん。


「ちぃちゃん、もう帰るとこやった?」


そう言いながらも、いつものように窓から入ってくるケンちゃん。


「ん? まだ大丈夫やで」


さりげなく窓の外をうかがう。

キョロキョロと視線を動かしてもう1人の人物を探す。


アレ?

いない?



「シィなら、今日は休みやで」


シィ君の名前を言われて、肩がビクンって震えた。

あわてて振り返る。


「え? 休み?」

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